2/07/2014

豊田道倫 & mtvBAND / FUCKIN' GREAT VIEW



豊田さんの前作『m t v』は本当に怪作だった、と思う。
最近は、この人の作品が出たら絶対買う!ってアーティストがあまり居なくて、唯一豊田さんだけがそれであった。追っかけである。過去の作品はコンプリートしている。

とっつきにくい表面をしているけどその核はたいへんポップである、というのが豊田さんの最大の魅力だ。近年はパラガ名義からソロ名義の活動にシフトしてきているが、同時にそのポップさが溢れ出し、以前のような孤高の存在という印象はもうない。ポップシンガーである。個人的には昆虫キッズとのコラボ作品『ABCD』を境に、ポップさが爆発したと思っているが、どうでしょうか。

また、これまで割と他からの影響を感じさせない、豊田道倫というロックだと言わんばかりの作品が多かったが、『m t v』もそうであるが、割と素直に流行りや話題の音楽の雰囲気(というかエッセンス)を取り込んだ作りになっている。今作でいえば「26歳」という楽曲は、最近豊田さんがTwitter等で絶賛し、対バンも頻繁に行う工藤冬里さんの影響を感じる。もちろんそれは工藤冬里、マヘル、ノイズと同世代のパンゴに在籍したドラムス久下さんによるところも大きいだろう。

さて、肝心の内容であるが、mtvBAND名義であるからといって『m t v』のポップでロックなイメージで聞くと、違和感を覚えるでしょう。MVも作られた「Heavenly Drive」「オレンジ・ナイト」等は楽曲の印象こそ前作寄りだが、ミニマルで凄みのある歌詞は、とても荒削りでこれまで未踏だった領域である。そしてその他の曲はバンドアンサンブルより豊田さんのボーカルを主体とした、これまた荒削りな楽曲である。前作からわずか一年足らず、更に前作以前とは違うバンドメンバーという点を踏まえると、よほどメンバーの相性がよく、スタジオ一発録音のような作り方で純度の高い、ホットな音をCDに閉じ込められたということだろうと思っている。

数回聞いただけではないが、耳への馴染みはあまりないが、これは「アプローチ」、「バイブル」のように聞き込むタイプのアルバムであると思う。そしてこの絶妙なラフさとバランスこそ評価すべき豊田さんならではの危うさであり、評価に値する。前作とは対で聞きたい名盤。

にしても白眉はやはり「Heavenly Drive」である。何度聞いても、美しい。ベアーズのライブが楽しみ。

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